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前田衣織 研究室

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私たちの研究室では血管、肺、皮膚、項靭帯、子宮などの多くの弾性組織に多量に広く分布し、且つそれらの組織の主要な構築成分である弾性繊維マトリックス(又は細胞外マトリックス)・エラスチンについて研究を行っています。

エラスチンの物理的機能として、私たちはエラスチンの力学的性質である弾性および耐久性に着目し、エラスチンの弾性機構、弾性発現構造の解明および老化や動脈硬化症等の病的老化に伴う弾性性機能低下とその構造変化の解析をバイオメカニクスの立場から行っています。エラスチンの自己集合組織化があり、これは試験管内ではコアセルベーションとして再現できます。すなわち、エラスチンを体温付近(約37℃)まで温めると、分子内・分子間疎水的相互作用により折りたたまれた構造をとって自己集合してコアセルベートを形成するが、室温以下(25℃)以下に冷やすと、分子は折りたたみがほどけた構造へと変化して脱集合します。この動的な分子構造変化に基づく可逆的な自己集合と脱集合の機構を核磁気共鳴、円二色性、赤外、光散乱等の方法を用いて検討しています。

生物学的機能としてエラスチンの細胞接着、細胞遊走、細胞増殖等があります。その機能を明らかにするために、血液細胞の単球、それが分化したマクロファージ、血管壁の平滑筋細胞等を用いて、エラスチンレセプターとその発現調節、細胞内情報伝達機構(cGMP, cGMP依存性プロテインキナーゼ等)、細胞骨格蛋白質の発現調節等について研究しています。特に血管平滑筋細胞は、老化や動脈硬化症の病的老化に伴って「収縮型」から「合成型」へと形質転換するが、その形質転換はエラスチンの質的、構造的変化と関わっている可能性もあり、そのメカニズムの解明は非常に興味をもたれています。

エラスチンの多様な機能が徐々に明らかにされつつある中で、私たちの研究室では、これらの機能を活用してエラスチンを素材にした新規の生体機能材料(バイオマテリアル)の設計、作製を行っています。そしてそれらのバイオマテリアルを人工血管、冠動脈再狭窄防止用塗布剤、薬物徐放システム用担体等へ応用することを試みています。

それから、エラスチンは代謝回転の非常に遅い蛋白質であるため、肝不全や糖尿病の患者では他のタンパク質と同様エラスチンにも糖化が起こり、血管の硬化がみられます。

そこで、エラスチン糖化のメカニズムを解明することにより、肝不全や糖尿病と血管硬化との関連を明らかにする研究を行っています。またエラスチン中の疎水性ドメインや親水性ドメインに対する抗体を作製し、老化や動脈硬化症の病態とエラスチンとの関連を明らかにする研究も行っています。

エラスチンの機能を利用した人工血管

最近の主な著者・論文

  • 岡元孝二、前田衣織
    『生物工学実験書』第1章 生化学実験:1.2.5 (3) 薄層クロマトグラフィーによるアミノ酸・ペプチドの定性分析法
    (日本生物工学会編)pp.35-39 培風館 (2002)
  • Induction of Macrophage Migration Through Lactose-insensitive Receptor by
    Elastin-derived Nonapeptides and Their Analogue
    Iori Maeda, Noriaki Mizoiri, Maria Portia P. Briones, Kouji Okamoto
    J. Pept. Sci., 13, 263-268 (2007)
  • Characterization of the Molecular Interaction between Tropoelastin and
    DANCE/Fibulin-5
    Hiroshi Wachi, Risa Nonaka, Fumiaki Sato, Kayoko Shibata-Sato, Marie
    Ishida, Saori Iketani, Iori Maeda, Kouji Okamoto, Zsolt Urban, Satoshi
    Onoue and Yoshiyuki Seyama
    J. Biochem., 143, 633-639 (2008)
  • 前田衣織
    『エラスチン:構造、機能、病理』第3章 分子構造と機能
    第1項 エラスチンのコアセルベーション特性と構造
    (伊藤浩行編集)pp.84-98 山本健美術印刷(2008)

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