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坂本順司教授らの論文がScience誌に掲載されました。

坂本教授とマックス・プランク研究所(ドイツ)のミケル教授(1988年ノーベル化学賞受賞者)の共同研究により、世界で初めて微生物特有の「呼吸酵素」の精密立体構造を解明しました。 この研究成果は、創薬・医療分野での応用、特に結核菌や新興感染症の病原菌の「息の根を止める」新しい治療薬の開発に貢献することが期待されます。

本研究成果のより詳しい解説はこちらをご覧ください。

なお、本共同研究論文は、4月29日(金)発行の米国の学術誌「Science」(6285号)に掲載されました。

Safarian S, Rajendran C, Müller H, Preu J, Langer JD, Ovchinnikov S, Hirose T, Kusumoto T, Sakamoto J, Michel H. Structure of a bd Oxidase Indicates Similar Mechanisms for Membrane-integrated Oxygen Reductases (bd型酸化酵素の構造は、膜内在性の酸素還元酵素に共通な反応機構を示す). Science 352(6285): 583-586 (2016).

この研究成果は西日本新聞(平成28年5月2日)でも紹介されました

坂本順司研究室のホームページ

 


【本研究成果のより詳しい解説】

~新しい抗菌薬の分子設計へ大きな前進~
世界初! 微生物特有の「呼吸酵素」の精密立体構造を解明

「呼吸酵素」とは、動物や微生物の細胞にあって、生命活動に必要なエネルギーを食物の栄養分から抽出する酵素です。この酵素は、呼吸で取り入れた気体の酸素によって糖質や脂質を酸化する反応で、エネルギーを獲得します。これまで呼吸酵素のうち、ヒトなどのミトコンドリアにある「ヘム銅酸化酵素」という分子の研究は進んでいて、日本の研究者も大きく貢献してきました。今回坂本教授らが精密な立体構造を世界で初めて解明したのは、微生物に特有な「シトクロムbd型酸化酵素」という分子です。

このbd型酵素は、結核菌やジフテリア菌・大腸菌などの病原菌を含む多くの微生物の生存や増殖に必要なタンパク質分子であり、その最初の発見も我が国でなされました。今回の研究は、X線結晶構造解析という手法で、この酵素の原子レベルの立体構造を解いたものです。ベールを脱いだその構造は、ヘム銅酸化酵素とも、その他すべてのタンパク質分子とも似ていない、ユニークなものでした。その座標データを元に、バイオインフォマティクス手法を用いれば、創薬・医療分野での応用が期待されます。結核は今でも、世界で毎年百万人単位の犠牲者を出す世界3大感染症の1つです。また大腸菌O-157などによる「新興感染症」もたびたび出現しています。微生物特有のbd型酵素にはピッタリ当てはまるが、ヒトや家畜の呼吸酵素には悪影響のない分子を設計することにより、病原菌の「息の根を止める」新しい治療薬の選択肢を開発しうるでしょう。

この酵素がそれほど重要であるにもかかわらず、これまで立体構造が一つも解かれていなかった理由は、構造解析に必要な単離や結晶化の難しい不安定な「膜タンパク質」という特殊なタイプの酵素だったことが一因です。坂本教授は、高温環境に生息する「好熱菌」という微生物に着目し、熱安定性の高い膜酵素を研究のターゲットにしてきました。また共同研究者のミケル教授は、世界で初めて光合成の膜タンパク質の精密構造を解明し、1988年にノーベル化学賞を受賞したX線結晶構造解析の専門家です。この独自な研究対象と高度な研究技術の組み合わせが、世界初の成功を可能にしたと考えられます。

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