ポストゲノム時代の到来で、ゲノムやプロテオームに関する膨大なデータから、個別化医療や創薬に役立つ、意味ある情報を抽出することは非常に重要である。一方、高齢化社会が進む中、認知症などの疾病メカニズムの解明やQOL(Quality of Life)の向上に向けても、生命科学と情報科学の融合領域はますます重要視される。
本研究室では、こうした時代背景や社会要請に答えるために、特に、遺伝子と脳波に着目して研究を進めている。
DNAマイクロアレイ技術の発展および普及により、一度に数千から百万に及ぶ遺伝子を解析できるようになり、診断や(予後)予測のためのclassifiers構築の研究が盛んである。しかしながら、classifiersの予測精度や異なる研究機関間での信頼性については未だ実用化レベルとは言い難い。近年、統計学的にあるいは事前知識を利用して、共通した機能に関与するgenesの集まりを1つのgene setと捉え、このgene setの組み合わせによってclassifiersを構築しようとする試みがなされつつある。
本研究室では、医療機関との共同研究を通じて、統計学的なアプローチ(ICA:Independent Component Analysis)と知識DBの活用に基づいてgene setsを選抜し、プロビットモデルによるclassifiers構築を目指す。プロビットモデルのパラメータ推定にはMCMC(Markov Chain Monte Carlo)法を利用する。
BCI(Brain-Computer Interface)とは、脳神経細胞の活動を入力信号としてそれらを制御信号に変換するシステムを指す。本研究室では、脳活動として脳波を利用し、例えば、二者択一の質問で、声にも出さず身振りでもなく、ただYESあるいはNOと頭に思い浮かべるだけで、相手に伝わるような仕組みを検討中である。具体的には、動作イメージ遂行中のsingle-trial EEGsにICAとダイポール推定を適用し、得られた推定結果からイメージした手の左右の分類および予測を試みている。
分類・予測器構築の第一ステップとして、数量化分析II類を利用する。将来的には、ダイポール推定結果の時間変化を考慮して、 Dynamic Bayesian Networkを利用することにより精度向上を目指す。
上記2テーマに共通した、データ解析手法に関するキーワードはICAとベイズ統計である。
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