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入佐正幸 研究室

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溶液中の蛋白質分子を題材とした生物化学物理の問題を解決しうる理論手法を、 溶液の理論(物性理論)を用いて開発することが、我々のテーマである。
生命現象を司る「もの」(実体)は生体高分子である。特に蛋白質分子は「機能」を持ち、また一方では生物そのものを形作っている。分子進化と呼ばれるように、進化によって変化する実体も蛋白質分子である。蛋白質分子は20種類の単語(アミノ酸残基)の順列組み合わせになっている。この組み合わせの変化が分子進化に相当する。蛋白質分子の際立った特長の一つは、水中で一つの立体構造をとることである。これは、紐を水に入れると自発的にある3次元形状を作ることに例えられる。現在では、特定の立体構造を持つことが「機能」に必要不可欠であると考えられている。単語のでたらめな組み合わせでは意味のある文章にならないのと同じように、でたらめなアミノ酸残基の組み合わせからなる蛋白質分子は水中で一つの立体構造をとることができない。分子レベルで水中での生命現象を理解する一つの方法に、我々が用いているコンピュータを用いたシミュレーションや理論計算がある。
[これまで]統計力学手法を用いて、任意の形状の溶質を含む水溶液の構造および熱力学的性質を導出しうる理論(拡張scaled particle theory)を構築してきた。
当研究室では拡張scaled particle theory (XSPT)を構築してきた。この理論の構築には微分位相幾何学および計算幾何学を道具とした(Figure 1)。幾何学が必要となったのは、分子レベルの理論であるため溶質分子の排除体積の解析的計算が必要だったからである。また、疎水相互作用にはXSPT を、親水相互作用にはPoisson-Boltzmann 方程式に基づく静電場計算を用いることにより、水和における2つの成分を同一の分子モデルから計算した。
[いま]分子の水和に関する熱力学量をXSPTを用いて計算。計算にはコンピュータを使用。
これまでのところ、実験結果と驚くほど良い一致がみられる。溶質分子内の相互作用である立体構造エネルギー関数とXSPTを組み合わせることにより、任意の立体構造を持つ巨大分子(400残基程度)の水和自由エネルギー計算に成功している。また、水和自由エネルギーの温度依存性、圧力依存性から、それぞれ、熱容量や部分モル体積への水の影響を見積もることができる。
[これから]生物の理論的理解として面白い問題は
通常の分子動力学では再現不可能な長時間での蛋白質分子の挙動を、 XSPTを用いることによりコンピュータで理論計算する。また、蛋白質分子の3次元構造予測問題、筋肉の動作原理の解明(モーター蛋白質のエネルギーに関する分子間相互作用の解明)にも貢献すべく研究を進めている。

Figure 1

Figure 1
Voronoi cells and fused spheres (2-dimension)Solid lines and Dashed lines represent the fused spheres (solute) and Voronoi cells, respectively.

Figure 2 アクチン分子(373残基、空間充填モデル)

Figure 2 アクチン分子(373残基、空間充填モデル)
この分子にFigure 1 に示した計算幾何学(重み付きボロノイ図)の手法を使い、XSPTによる水和自由エネルギーの計算に成功した。 3次元形状観察のため仮想現実(バーチャルリアリティ)手法を使っている。

References

  • M.Irisa,K.Nagayama,and F.Hirata, Chem.Phys.Letters,207 430-435(1993)
  • M.Irisa,T.Takahashi,K.Nagayama, and F.Hirata, Molecular Physics,85,1227-1238(1995)
  • M.Irisa,T.Takahashi,F.Hirata, and T.Yanagida, Journal of Molecular Liquids,65/66,381-384(1995)
  • M.Irisa, Computer Physics Communications,98,317-338(1996)
  • M.Irisa, Journal of Biological Physics,28,347-357(2002)

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