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大内将吉 研究室

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マイクロ波でグリーンイノベーション

マイクロ波照射下での有機化学反応の促進効果が1986年にGedyeらによって確認されてから,マイクロ波照射は単なる加熱のための手法とは言えなくなりました。一般に,化学反応に対してマイクロ波を照射すると,反応が100倍ほど高速化されます。私たちの研究室では,このマイクロ波照射効果を,有機反応,酵素反応,生体触媒反応,あるいは,細胞培養などへ展開し,ケミカルバイオロジーやバイオテクノロジー分野など,あらゆる加熱操作をマイクロ波加熱へ置き換えることを目標に研究を進めています。これらの研究を進めることで,二酸化炭素削減,限りある資源の有効活用,省エネルギーなどの環境対策技術,すなわちグリーンイノベーションが達成できます。

マイクロ波促進化学とは

一般的にはマイクロ波の効果は,マイクロ波領域の周波数の電磁波照射により,分子あるいは分子集合体を高速で回転運動させ,分子間での衝突を増やし熱エネルギーに変換し,これを反応エネルギーに利用すると考えられています。通常の加熱反応では,反応系全体に熱エネルギーを伝達するためには,相当な時間を必要とするが,マイクロ波は,反応系に存在するマイクロ波を吸収するすべての極性分子に対して熱エネルギーを与えるため,従来数時間かかっていた反応を秒単位まで短縮することが可能となると考えられています。このようにマイクロ波照射下での化学反応は,時間短縮,収率の増大など非常に大きな効果があり,この効果のメカニズムの解明や有用物質生産のためのその利用法を図るなど,マイクロ波化学と呼ばれる領域を確立しつつあります。
マイクロ波化学の一番の関心・謎は,ヒーターで加熱した場合とマイクロ波で加熱した場合,まったく同じ温度でありながら,反応速度や気体の溶解度などの物理化学的な現象がまったく異なるということです。いわゆるマイクロ波効果と呼ばれる現象をどのように説明するのか,世界中の研究者が競っているのです。

私たちの研究室では,以下の研究を進めています。

1.酵素反応,生体触媒反応に対するマイクロ波促進効果

酵素反応として,lipase, protease, phosphoesteraseなどへのマイクロ波効果を検証し,アレニウス式のパラメータとして活性化エネルギーと頻度因子のどちらに影響を与えるのかを調べています。また,遺伝子増幅反応として,Polymerase Chain Reaction (PCR)やRolling Circle Amplification (RCA)に対するマイクロ波照射効果も検討しています。

2.マイクロ波の反応促進効果の分子論的解明

反応基質の双極子モーメントと反応収率に相関性の解明と,分子間反応と分子内反応に分け,反応速度論的な解析を進めています。

3.バイオテクノロジーへのマイクロ波加熱の適用

プロテオミクス技術のために,蛋白質の高速加水分解をマイクロ波化学で検討しています。細胞培養にマイクロ波加熱を利用し,その影響を調べています。さらに,バイオマスから効率的に有用物質を生産するため,マイクロ波化学を応用しています。

4.バイオエタノール生産過程におけるマイクロ波技術の利用

化石燃料に変わるエネルギー政策として,バイオエタノールが大きな注目を集めていますが,デンプンやセルロースを原料とするバイオエタノール生産のプロセスについては,3つの過程でマイクロ波技術の適用が考えられます。デンプンやセルロースの糖化過程,エタノール発酵過程,水-エタノールの分離操作としての蒸留過程です。すでに,糖化技術にマイクロ波による反応が検討されていますが,我々は,生体触媒として好熱菌由来酵素や麹菌などにマイクロ波技術を組み合わせることや,水-エタノール混合物からの分離技術としてマイクロ波の利用を考え,バイオエタノールの生産を目指しています。

5.化学進化や生命の起源の時代のエネルギー源としてのマイクロ波効果

化学進化や生命の起源と呼ばれる生物進化に至る前の原始的環境の中で,さまざまな生体関連分子がどのようにして自然発生してきたかについては,これまで多くの仮説が提唱されてきました。宇宙マイクロ波背景放射の存在が明らかにされたことから,私達は,短い時間の中で効率的に有機化合物が生産されるためには,マイクロ波化学が影響したという仮説を打ち立てました。現在,アミノ酸からペプチドや蛋白質が自然発生するエネルギー源としてマイクロ波照射の効果を研究しています。

最近の主な論文

  • A Novel Transesterification Catalyzed by Phosphotriesterase in an Organic Solvent, Biotechnol. Lett., 18,923-926(1996).
  • An Optical Resolution of Racemic Organophosphorous Esters by Phosphotriesterase Catalyzing Hydrolysis, Appl. Biochem. Biotechnol . , 63/65, 1234-1238(1997).
  • Statistical Characterization of Eleven of Helix Elements with Amino Acid Residues in the Middle of Triplets, Bull. Chem. Soc. Jpn., 71,385-395(1998).

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